14日 晴れ。晴れは晴れでも昨夜からかなり涼しい。
Hansが今朝早くカウスティネンを離れてしまうのは本人から聞いていたので、見送りに絶対起きよう!と心に決めたのは、昨日の朝。しかもちょっと驚いたのが、Timo Myllykangasが車でピックアップにやってくるという。
目が覚めたのは、Timoの声が部屋の外で聞こえたとき。時計を見ると、Hansが言っていた時間より5分ばかり過ぎている。超特急で着替え、髪の毛をひっつめ、部屋を飛び出したら、ちょうどTimoが運転席に乗り込んだところ。裸足で車に駆け寄るとHansがわざわざ降りてきてくれてハグ。二言三言話をして、Hansは再び車へ、わたしは玄関へ。車を見送ろうと手を振ると、中に乗っていたほかの人たちも手を振り返してくる。そこで気づいた、Einar-Olavも車の中にいたことに……! そっか、Einar-Olavも今日カウスティネンを離れちゃうんだと思うと、昨日のライヴを思い出して少し寂しい。
車が出て行くのを見送ったあと、ホストファーザーのMAに「今日は10時からのプログラムを聴きにいきたいから、朝食を少し早めにしてもらってもいい?」と尋ね、OKをもらう。朝食の時間までまだ時間がだいぶあるので、再び睡眠。
いつもより30分早く朝食を食べ、出かける支度をしようと部屋へ戻ると、ここ2~3日で習慣化されたかのように、下から2番目の女の子Lと一番下のやんちゃ坊主Rが部屋をノックする。招き入れると、うれしそうな顔をするので、拒むことなんか絶対できない。まだ少し時間があるので、まあいいかと遊んでいたら、もう出かけなくてはいけない時間がとっくに過ぎてることに気づき、大慌てで支度、飛び出すようにお家を出発。結局10時から始まるプログラムに、10分ほど送れて到着。目的は、Soittosaliで行われるJärvelän pelimannit ja Pikku-Aapit。JPPはJärvelän pikkupelimannit。フィンランド語で「小さな」を意味するpikkuが入るわけだけど、ここには入ってない。ということは、もしかして、Järveläさん大集合なのでは?と思い行ってみたらビンゴ。ステージにはMaunoを始め、Arto、Alina、Esko、Artoパパなどなど見知った顔がずらりと並んでいる。朝早いからそんなにお客さんもいないだろうと思いきや、会場は80ほど用意された椅子はいっぱいで、立ち見も出てる。やっぱり人気なんだな。演奏された曲は、おそらくカウスティネンの伝統音楽。朝から楽しい音楽を聴けて幸せ。
11時に終わり、この時間帯はとくにコンサートもやってないことから、お家へ戻る。再びLとRと一緒に遊び、しばし二人とコミュニケーションを取る。
それにしても、子どもってどこの国も同じなんだな。まだあまりたくさんの言葉をしゃべることができないRが一生懸命何かを言っているのでよーく聴くと、自分の名前をフルネームで言っていることが判明。それが舌足らずで、日本人の子どもも日本語覚えたての最初のころはこんなしゃべり方するよなーと思うと、なんだかおもしろい。
Rがムーミンハウスを出してきたので、それを使って一緒に遊び、ムーミンの絵本も見せてもらう。そして、さらにムーミンのオリジナルソングが収録されたCDも聴かせてもらう。2~3曲聴くとフォークミュージックが流れてきたので「あれ?」と思っていたら、ホストマザーのMO曰く「Maunoが参加して、フォークミュージックを演奏してるの」。ええー! なんだってー!! たしかにクレジット見ると、Maunoの名前が。ムーミンのCDで演奏しているMauno。し、知らなかった……。これは買わねば。
去年自転車で近辺を散策したように、今年もできたらいいなーと思い、本当にわがままばかりで申し訳ないと思いつつ、MAに自転車を貸してほしいと伝える。
すると、長男のPが隣に住むおばあちゃんの自転車を持ってきてくれて、MAがわたしでも運転できるよう、サドルを目いっぱい下げてくれる。家にいたみんなが玄関付近でワイワイやってるのを、家族が出かけるのだと思ったのか、一番下のRが洋服を着替え、ニコニコしながら帽子をかぶり、靴を履こうとしている。そんなRにHei hei!と声をかけ、自転車に乗って出発。ごめんね、R。
去年と同じコースを取るつもりが、看板を見落としてしまい、カウスティネンの村境まで来てしまう。隣の村の名前が見え、そのまま通り過ぎようとしたとき目に入ったのが、カンテレのイラスト。村のシンボルなのか。隣の村に入って振り返ると、カウスティネンの看板が出ている。同じようによく見かける村のシンボルと一緒に村の名前がある。ちなみにカウスティネンはフィドル。
気を取り直して、去年と同じ路をたどり、橋を渡ってMaunoの学校へ。しばし休憩したあと、T字路へ出る。あまり時間もなかったので、そのままカウスティネンの中心地へ向かうことに。その途中で見つけたのが、この道路の名前。知らない間にJärveläntieという路を通っていたらしい。
そのまま走りに走って、フェスティヴァル会場に到着してみると、アリーナでTony O'Cnnell & Mandy Morrowというアイリッシュの二人組みによるライヴが始まっていた。いろんな国の音楽がこうやって聴けるのは、違いを比べることができたりして、本当に楽しい。
先日会場でお会いしたKさんがイチオシのバンド、Kiharakolmio(キハラコルミオ)のライヴをPelimannitaloで聴く。Kさんが絶賛していただけあり、とてもすばらしい! まだまだ知らない、良いバンドがたくさんあるのだと改めて思う。Kiharakolmioは、ハーモニウム、アコーディオン、ベース、ギターの4人組。個人的には北欧伝統音楽にはまったのが弦楽器がきっかけだったこともあり、フィドルが入っているバンドを主に聴きつづけてきたけど、Kiharakolmioは、自分的に新しい発見。音楽はグルーヴがわかりやすくてノリやすいし、聴いていて楽しい音楽。また生演奏を聴きたい。
Kiharakolmioのコンサートのあとは、いつものように適当に会場をブラブラする。ただ、この日は他の日と違って、えらく寒かった。涼しい、ではない。「寒い」。確か今は夏だったはず……ということは、カウスティネンでは通用しない。昼間は晴れて日差しも結構強いので暑いが、日陰に入ったり風が吹いたりすると、結構涼しくて、日本なんかにいるより遥かに快適。でも、それは昼間だけ。夜になると急激に気温が下がり、半そでではいられないほど(それなのに、どうしてフィンランド人たちは半そでとかノースリとか、キャミ、裸足にサンダルというような、典型的な夏の格好でいられるのか、本当に不思議)。キャミの上に羽織っていたカーディガンの上に、持っていた厚手の綿でできた長袖シャツを着て、それでもまだ寒いので、トレーナー地のパーカーを着る。それでもまだ寒いので、首にスカーフのようなものを巻く。気持ちは晩秋。
これで寒さはしのげても、まだ涼しいと感じてしまうくらい。日本の夏ならウェルカムな気候なのに。顔をスカーフで半分隠しながら会場内を歩いていたら、聴き覚えのある音、音楽が聴こえてきたので、ふらふらっとそちらへいってみると、一昨日昨日と変わって、今日は同じSoittosali前でAmpron Prunniが演奏しているではないか!! 吸い寄せられるように近づき、しばらく演奏を聴いていた。少なかったギャラリーはいつの間にか増え、周りを取り囲むようになっている。その中で一人、演奏が終わるとArtoの前に駆け寄ってはしゃぎながら拍手をする女の子が。見た目と雰囲気から察するに、Artoの娘であることは間違いない。JPPのドキュメンタリーに出てたあの子なんだろう。大きくなったね……。
寒さからくる震えに耐えて音楽を聴いていたものの、30分もすると、我慢ができなくなってきてしまう。それでもしばらくは聴いていたけど、それも限界となり、結局Ampron Prunniの演奏中にその場を離れてしまうことに(もう、本当に寒くて寒くて……)。聴きたかったコンサートは他にもあったのに、今日はこれで会場を離れる。
家に帰ってシャワーをあび、部屋へ戻ろうとしたら、リビングにいたホストファーザーとマザーに呼び止められる。「日本を紹介する番組やってるわよ!」というので、興味津々で画面を覗くと、鎌倉の大仏さまが映っている。おもしろそうなので一緒に見ることに。これは「旭日の暁」という日本語タイトルがちゃんとついている、フィンランドの国営放送YLEが放送する日本を紹介する番組(フィン語タイトル:Nousevan auringon kajo)。わたしが見たのは、全9回あるうちの第6回目放送のようだ。サイトに写真があった。鎌倉の大仏と、東京都水道局。そのほか見たのは、京都の町並み、原宿、(たぶん)代々木公園、(たぶん)某有名楽器店、お台場のヴィーナスフォート。
びっくりしたこと。それは、スターバックスなどではおなじみの、テイクアウトの際、カップが熱くないように付けてくれる段ボール紙でできたアレ、あるじゃないですか。あれはジャパニーズ・デザインなのだと紹介されていたんだけど、それ、本当なの? 「うーん……そうなんだっけ? えーっと、そのものの名前も知らないのに、何て答えていいやら……」と一人迷宮に入ったような気分に。
見終えたあとは、ただ番組を見ていただけなのに、ぐったりと脱力。「外国で日本を紹介する番組を見るって、すごく不思議な気分だよ……」というと、MAもMOも笑っていた。
いやはや、しかし。まさかフィンランドで日本を紹介する番組を見ることになろうとは。どんな番組なのか、さわりだけでも見てみたいという人は、「旭日の暁」サイトの上にあるVideotをクリック。RealPlayerで30秒から3分弱程度の映像が見られます。神奈川県が誇る参議院議員の元フィンランド人(すでに日本に帰化してるから)ツルネン・マルテイさんもこの番組に出演。